

NHK朝ドラ「ばけばけ」が話題ですね!
個人的に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と言えば、同時代に活躍しながらもそのスタンスが対照的だった夏目漱石をいつもセットで思い浮かべてしまいます。
両者に直接的な交流は無かったそうですが、英語教師として熊本や東京でニアミスしている間柄だからです。
小泉八雲がいた日本の時代背景
私が一番好きな作家は夏目漱石ですが、太宰治いわく「俗中の俗」だと———つまり大衆的すぎて文学としての芸術性が低いと。川端康成も「未熟の時代の未発達の作家」と評しています。
しかし当時の知識人のトップとして、いわゆる余裕派の「視座をぐっと高く持って客観的に物事をとらえよう」としながらも、実は自我の葛藤に泥にまみれるように苦しんでいて。
それでも明治維新の光と影・清と濁を丸呑みして、日本を世界に押し上げていくために「先頭に立って走り続けなければならなかった」。そんな役割を担った知識人達が夏目漱石含めてたくさんいたのだと。
ですから子どもだった私は傲慢にも、小泉八雲の言葉に、背負うものがあまり無い、ストレンジャー的な気楽さを感じていたのです。
「きっと当時はみんな、迷信を追いかける余裕なんて無かったはず。それどころじゃなかったんだよ」と。
日本の知識階級は、超自然的なものに関する認識については、はなから過度に侮辱する嫌いがあり、刻下の宗教的な大事となると、完璧に無関心である。
大学で近代哲学を学んでも、社会学とか心理学とか、その学問的関連性を独立して研究しようなどという気はほとんど起こらないようだ。彼らにとって、迷信はただの迷信でしかないのだ。
小泉八雲「新編 日本の面影(池田雅之訳 / 角川ソフィア文庫)」より
※当時所持していた旧版紛失のため新版より引用しました
小泉八雲の出生図(出生時間判明)
そんな経緯もあって小泉八雲の作品にはイマイチ夢中になれなかったのですが、図らずも2023年、島根旅行がきっかけでほぼ30年振りに「再会」し、占星術を通して次第に考えを改めることになります。
以下は小泉八雲の出生図とミッドポイント一覧表(ハーモニック8)です。
当時冥王星はまだ発見されていませんが、重要な位置にあるため考慮に加えたいと思います。
出生時間は「午前4時」。
1分単位で正しいわけではないのでしょうが、島根県松江市の小泉八雲記念館で展示されている「レフカダ出生記録台帳」という正式文書に記録されているものです(台帳自体はコピーされたものでした)。

海王星のみ逆行

出生図リーディング
私自身は支配星の流れ=各ハウスのカスプを重視するため、鑑定では出生時間が大まかに分かっていても分単位で曖昧な場合はソーラーハウスを優先して見ます。
しかし今回は「午前4時を正確な出生時間として」(文章だと膨大な情報量のほんの一部にしか言及できないのですが……)プラシーダスハウスで読んでいきたいと思います。
①繊細だがタブーの無い興味関心傾向
Asc双子座。支配星の12ハウス(以下Hと表記)双子座水星が4H乙女座木星とスクエア。
この水星は4H(IC)からの流れも持つため、もうこの時点で豪快で声が大きくて……みたいなキャラクターにはなりづらいです。
好奇心旺盛だが様々な事象に対し非常に敏感で感受性豊か、繊細、神経質。
抑制・抑圧が強い環境下で成長した可能性。
同情心も強いが、心を守るための多少の現実逃避傾向もあるかもしれません。
とは言えこういった配置の方はユーモアがあるというか「話しかけてみるとよくしゃべってくれるし言動もおもしろい」感じの人も多いように思います。文才がある人も非常に多いです。
かと言って感情を分かりやすく表に出すキャラクターかというと、そういうわけでもなさそう。
そのため一見何を考えているのか分かりづらい印象を与えやすいですが、ありとあらゆる方向に興味・関心を広げていく性質が非常に強く、かつそれは一般常識の範囲に留まらない。
なので興味が赴くままにアンモラルな・アウトローな事象・対象にも向かっていく傾向。
もちろんそれは「目に見えない超自然的な領域」にも及ぶため、非科学的なことまで含めてもかなりの博識。
見た目的に分かりづらくても本人の内部・内面がいかに豊かなのかが推察できるわけですが、それは逆に言えば本人の中でタブーが存在しにくい、とも言えます。
そのタブーの無さが当時の一般社会・一般の人の常識・感覚との乖離につながりやすく、雰囲気的にも浮世離れした感じは出てきやすい。
水瓶座初期の8~9Hn月の状態も含め「興味あることに対し、常識から外れていようが抵抗なく足を踏み入れていく&受け入れていく」傾向をさらに補強していると言えます。
②張り詰めた神経と野心、「精神的な」根無し草傾向
一方でこの水星-木星スクエアは月を頂点としたトールハンマー(135度+90度からなる二等辺三角形)を形成。
もうひとつ、木星を頂点とした月-天王星・冥王星のトールハンマーが重なっている状態。ミッドポイントでは水星=月/天王星=天王星/冥王星といった特徴も。
明晰すぎて自分で自分の首を絞めて追い詰めるような強迫観念の強さ。
張り詰めた神経が微に入り細に入るような緻密さを要求し、納得するまで突き詰めて磨き上げるような仕事をするタイプ。
そのため精神的ストレスを抱えやすいが、自分の圧倒的な仕事で周囲を屈服させたい、抜きん出た存在になりたい、といった強い野心も見受けられます。
また繊細な雰囲気を持ちながらも言葉で真を突く傾向。それだけ説得力があるということですが、その正確さが人を傷付けることもあったかもしれません。
そういった意味では①に書いたように分かりやすい豪快さはなくとも、いざとなると周囲が驚くような大胆さや突き抜けた集中力を兼ね備えていたと言えます。
そしてもうひとつ、Asc双子座含むこの12H水星の強調、という時点で「精神的な」根無し草傾向も強調されます。
小泉八雲の場合、幼い頃からやむを得ず様々な国を転々として物理的にも根無し草だったわけですが、それはそもそも精神的に揺らぎやすく、理由もなく不安に侵されやすいからこその居場所や安息を得るための彷徨。
しかし行く先々で「タブー無き興味・刺激」を自ら探し飛び込んでしまって、そのせいで困難な生き方をせざるを得ない。
結果的に精神的安息が遠のいていく———無意識にこういったパターンを繰り返していたのではないかと推察できるのです。
③こだわりの強さと反骨精神、愛の深さ
そしてこの出生図の重要な特徴のひとつであるTスクエア(11H牡羊座冥王星-天王星合-8~9H水瓶座月と2~3H獅子座金星)。
そもそもサクシーデントハウス(2-5-8-11H)でのTスクエアは頑固な傾向。
あらゆる方向に興味が向く割には、個人的な好みの入り口がすごく狭い。
傍から見るとかなり風変わり&テコでも動かないようなこだわりの強さが出てきやすいと言えます。
そして彼の場合、そのこだわりの強さは思想の強さや怒り・強烈な反骨精神としても表れやすいのです。
とは言え、母と幼い頃に離れ離れになったまま癒えない傷も常に彼の中に大きく横たわっていて、精神的安息を切望していながらも激しく生きざるを得ない矛盾は前述②の通り。
のちに妻の家族を丸ごと養っていくのもこのTスクエアが表していると言えます。
この金星が5H支配星なのも相まって金銭面でも規格外な事象が起こりやすいですが、それは彼の愛の形でもあるのです。

時代に逆行・反発し独自性を深めていく
また小泉八雲が生きた時代は、アメリカで「モダン・スピリチュアル」が誕生~ヨーロッパに波及・発展した時代でもありました。
占星術好きの私達にもお馴染みの、錬金術(ヘルメス主義)、神智学、黄金の夜明け団などなど後世に大きな影響をもたらす様々が出てくるわけですが、元々のモダン・スピリチュアルの出発点としては「霊の科学的解明を目指す」ことだったそうで……。
実験で霊の実在を証明しようとしたり、この世とあの世をつなぐ法則を見つけようとしたり……など、これまでの「霊」への考え方を本気で再編成しようとした時代だったそうです。
課せられた「枠」を意図的に外していく
例えば英国留学した夏目漱石もモダン・スピリチュアルの隆盛を見たひとり。
「琴のそら音」など霊を題材にした作品もありますが、その存在をどこまでも科学的・合理的にとらえようとしています。
しかし小泉八雲は上記③の通り、あくまで独自の道にこだわるのです。
たとえどんなに東京などでは軽蔑されていようとも、もっとも大衆になじんだ迷信とは、希望や恐怖や善悪の体験、いうなら霊界の謎を解こうとする素朴な努力の、紙に書かれていない文学の断片として、珍重すべき価値があるのである。
小泉八雲「新編 日本の面影(池田雅之訳 / 角川ソフィア文庫)」より
当時これほどまでに日本で見下されていた「幽霊」や「魂」を創作の題材として敢えて選ぶのは、もちろん本人のタブー無き興味傾向ゆえでもあるでしょう。
しかしそこに科学との関連性を持たせず、大衆になじんだ迷信を「ありのまま」残そうとした。
それは前時代的な日本を「ありのまま」尊重しようとする姿勢であり———だから決してお気楽だったわけではなく———むしろ「怪談」を通して、日本の急速な近代化への強い反発を表明していたのかも?と思うのです。
つまり霊に対する「科学的な枠」も、日本発展のための「近代化の枠」も意図的に取っ払って、もっともっと大きな視点で明治維新後の日本を見つめていたのだと。

12ハウス強調-海王星が示す「人間」への視点
さらに①の12H強調や魚座海王星のカルミネート、1H蟹座太陽とトライン。海王星=火星/木星=Asc/ノード=火星/水星、8~9H境目にある水瓶座初期の月に規格外のアスペクト。
「ばけばけ」でも「怪談とは寂しいものだ」と描かれていますが、ホラー映画的な「刺激的な恐怖」を扱うのではなく、人間の弱さや寂しさ、様々な状況で変化していく心理を重視していて。
ある時ふと陥る精神的な奈落や、普通に生活している自分の隣で黒々と口を開いている「穴」に意識的・積極的にスポットを当てていくような、日常と非日常のあわいを漂うような、そういった独特の感受性がうかがえます。
例えば「雪女」。
美しく働き者の妻、可愛い子ども達に囲まれる生活。
幸せの絶頂を感じていた夫はある吹雪の夜、10年前に大雪の中で遭遇した「白い息を吹きかけて同僚を殺した女」をふと思い出し、妻に不思議な話として語るのです。
すると妻は豹変。あの時、生涯秘密にしろと言ったではないかと夫を罵ったあと、苦渋に満ちた表情を浮かべ、子ども達を置いて煙となって消えてしまった———
子どもの頃はあまり感慨がなかったのですが、今改めて読んでみると、
「幸せの絶頂で、ふと気を抜いてリラックスした時に話したことが取り返しのつかないことになってしまって、夫はどれだけ後悔しただろう」
「大切な夫や子ども達を置いて消えなければならないなんて、雪女はどれだけ苦しかったろう」と胸に迫るものがあります。
他にも、耳を引きちぎられても、自分の身を投げ出すようにして悲憤にあえぐ霊を弔い続けようとする「耳なし芳一」。
自分を裏切った夫を、死んだ後もずっと待ち続けた「和解」。
これまで普通に暮らしていたのに、ふと精神のバランスが崩れる時の狭間を描く「茶碗の中」などなど。
小泉八雲の世界は「単に幽霊が出てくるだけの話じゃない」。
人間の「完璧ではない面」を描く12H-海王星的象意に満ちているのです。

国や人種、言葉や常識にとらわれず、時代の流れや課せられた枠を取り払って「人間のありのまま」を純粋に見つめようとした小泉八雲。
当時、世界のマイノリティだった日本で、日本人と結婚し安息を得たのも、そのタブーにとらわれない規格外の感覚で世界中を冒険し続けてきたからこそなのでしょう。
今回のリーディングはほんの一部なので、この記事をご覧下さった皆さんもぜひ様々な角度から小泉八雲のホロスコープや作品を味わってみて下さいね。
2025年 年末のご挨拶

2025年もなんだかあっという間でしたね!
鑑定をご依頼下さった皆様、講座に参加して下さった皆様、このHPやSNSをご覧下さっている皆様、占いでつながっている仲間達のおかげで乗り切ることができました。本当にありがとうございました。
どうぞ温かくして、良いお年をお迎え下さいね。
2026年もどうぞよろしくお願いいたします(´ ∇`)ノ

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