運が良い?悪い?定義の難しさ
「私は普通の人より運が悪いですか?」と訊かれることがあります。
これは私にとっては難しいご質問で……。
極端な例えで恐縮なのですが———例えば病気の方や事故に遭ってしまった方、その影響を強く受けるご家族がいたとして———ひとまず健康で最低限の生活が営めているのならそれだけで「運が良い」のかもしれない、と思うからです。
また出生図が文字通り千差万別で「普通の人」が定義しづらい以上、単純に「人より運が良い/悪い」とお答えするのが難しいというのもあります。
さらに「個人の受け止め方の問題」もあると思っています。
物事の捉え方の傾向———楽観的か悲観的か、自罰的か他罰的か、防衛的な傾向があるか、神経が細やかな傾向にあるかどうか、被害者意識が強めかどうかなどなど、同じ出来事であってもその受け止め方はまた千差万別だからです。
健康な方の「運の悪さ」を考える
とは言え、健康で問題なく日常を送っている方の中にも「確かにここまで来ると”運が悪い”と言えるかも?」と(私個人の感覚で)思える方がいるのも事実です。
運の良し悪しの判断はできませんが、今回は病気や事故といったケースではなく、あくまで健康な方が日常生活の中で感じている「運の悪さ」がどこから来るのか、ということについて考えてみたいと思います。
Aさん(男性)の運の悪さ
以下はAさん(男性)の出生図です(出生図・内容共に掲載許可を頂いております)。
「自分は人よりすごく運が悪いので、開運方法を教えてほしい」とお越し下さいました。
出生時間不明のためソーラーハウスで表示しています。
Aさんは柔道整復師。複数の有名スポーツ選手やプロスポーツチームと契約してお仕事をされている、大変お忙しい方です。
「仕事のことでうまくいかなかったり苦労したりするのは当然のことなので、そこは別に運が悪いとは思ってないんです」とおっしゃるAさん。
ただ「物心ついた頃から日常のどうでもいいようなことでとにかく予想外のことが多く、小さいストレスが積み重なっている」とのことでした。以下、「最近起こったこと」をお伺いしてみると……
- UberEatsやテイクアウトではいつも注文と違うものを受け取っている。ここ1ヶ月だけでも数えてみたら7割以上違うものだった
- (背が高く目立つ容貌にも関わらず)外食するとほぼ毎回自分の存在(注文)を忘れられてしまう
- 店員さんと相談して高価なダウンジャケットを買って帰ったら新品に大きな穴が空いていた
- 人混みの中を歩いたり電車に乗ったりすると知らない人に暴言を吐かれたり変なナンパのされ方をしたりする
- プライベートで旅行・お出掛けしようとすると目的地での土砂崩れや天候の悪化、車の調子が悪くなったり同行者が体調を崩したりして、予定通り行けたのが5割くらいしかない
本来なら大したことじゃない・時々起こる分にはほとんど気にならないのに、毎日・毎回のように続くと「また?」「なんで?」と精神的に消耗してしまう。「これは運が悪い星の元に生まれたからなのでしょうか?」とのことでした。
さて、ご覧下さっている皆様はAさんがおっしゃる「運の悪さ」が出生図のどこから来ているとお考えになりますか?
Aさんの出生図リーディング
天秤座金星-牡羊座木星のオポジションがAさんの人当たりの良さ・人の良さを示すことに加え、牡羊座月食生まれでこのラインが山羊座海王星とゆるくTスクエアなのもあって、「一見あまり細かいことを気にしなさそうな、明るく前向きで優しそうな」キャラクターと見られやすい傾向。
しかし蠍座水星-冥王星合や乙女座火星-射手座天王星スクエア、太陽(-月)の位置、ミッドポイント(HN8)での水星=天王星など踏まえるとかなり合理的で鋭い、研究者肌的な面も強調されていると言えます。
そういった意味では表の顔とプライベートの顔にギャップがある傾向。
普段は明るくしていても本来はどちらかと言うと自らを追い込むような内に向かう感情・情熱が強い方、そういった面をほとんど人に見せない方とも言えそうです。
火星-ドラゴンテイル合とは
そしてサインは違えど天秤座ドラゴンテイル合の乙女座火星。
天体+ドラゴンテイル合には母親との関係性など様々な解釈がありますが、そのうちのひとつとして「因縁的な一面がある」と言えるのではないかと思っています。
「因縁的」とは「個人ではどうにもできないような流れを(生まれつき)持たされている」ような可能性です。
火星-テイル合の場合、家系の中(故人含む)の誰かの悪癖(ギャンブルや飲酒、金銭問題や女性問題など)や特性・障害・病気・才能など良くも悪くも受け継いでいる、もしくはそういう人に巻き込まれる・関わっていく・面倒を見る・責任を持たされるなどのケースをこれまで多く拝見しています。
実際その中では、思い当たる家系の人物の出生図が本人の出生図と強い関係性があることも珍しい話ではありません。
もちろんそうでない(実際に影響がない・自覚がない・思い当たらない)方もいらっしゃいますが、例えば進行天体や経過天体で強調された時、人間関係などで深く複雑に関わっていくなど因縁を感じさせる出来事が起きているケースは多数あります。
火星-海王星スクエアとは
またこの乙女座火星はソーラーハウスでは12ハウス。創造性に長けますが衝動的な面もあり、リスクを取って行動していく火星でもあります。さらに乙女座30度という「行き過ぎる」位置+山羊座海王星とのスクエア。
火星-海王星のアスペクトを持つ方の特徴として以下のような傾向が挙げられます。
特徴として強く表出するのはハードアスペクトですが、ソフトアスペクトでもこの傾向は少なからず出やすいと感じています。
- 冴えた感覚・直感の鋭さ
- 行動があれもこれもと取っ散らかりやすいが非常にエネルギッシュ
- そのため異常に忙しい人も多い(女性の場合、そういう夫やパートナーを持つことも)
- 何度転んで落ち込んでも自分を立て直していく力がある
- 劇的な・激しい・常識を逸脱した出来事(家庭・人間関係・恋愛・仕事など)を経験しやすい / そういった出来事を日常生活に持ち込みやすい傾向
ノード軸+双子座キロンも入れるとグランドクロス(これはご職業にも表れていると思います)を形成。
スクエアは特にコントロールが難しいため、Aさんのお話しと掛け合わせると「(生まれつき)Aさん個人がどうにもできない混乱しやすい流れを持たされている」可能性は充分にあると推察できます。実はAさんは恋愛面でも現在進行形でかなり特殊な経験をされているのです。
また同じ火星テイル合-海王星スクエアを持つ他のケースでは、これまで7社転職したうち4社が倒産したという男性もいらっしゃいました。
Aさんの運が本当に良いのか悪いのか判断はできませんが、それでも出生図の特徴である「予想外のトラブルが制御しづらい傾向=運が悪いと感じやすい」ことにつながっているのは確かだと思います。
Bさん(女性)の運の悪さ
こちらはBさん(女性)の出生図です(出生図・内容共に掲載許可を頂いております)。
頂いたご相談(の一部)は以下の通りです。
- 他人と比べた時、どちらかと言うと自分は癖のある人を引きやすいのではないか
- 特に仕事面で「引きの悪さ」があるのではないか。パワハラ・セクハラを始め、これまで周囲の人が嫌がる上司に当たる回数が多かった
- 自分が悪いのか、それとも運が悪いのか
Bさんの出生図リーディング
ご覧の通り、Bさんも山羊座金星-ドラゴンテイル合。ここに天秤座火星-土星-冥王星合がスクエア。
この金星-土星はミューチュアルレセプションでもあります。つまり土星-テイル合の要素も持つということです。
Aさんとは毛色が違えど、「(生まれつき)Bさん個人ではどうにもできない対人関係全般で深刻な体験をしやすい流れを持たされている」可能性が高い配置であると同時に、地平線軸(Asc-Dec)に重なるノード軸-金星の「因縁の強さ」がその傾向をさらに現実的に顕在化させやすい特徴が強調されています。
火星-土星-冥王星合とは
この組み合わせはとにかく有能で努力家、抑制的で義理堅い方が多いです。
Bさんも実際責任のある立場でお仕事をされていらっしゃる方ですが、天秤座4ハウスということもありそもそも対人関係において防衛心が非常に強くオープンではない傾向。
しかし同時に7ハウスの状態も加味すると(自分の主張を持っていないわけではないのに)根本的に受け身、かつ最大限周囲の意向に添おうとする傾向も強く、精神的に疲弊しがちです。
これらは8ハウス水瓶座太陽とトライン。
人間関係を突如ぶった切りたくなる衝動を持ちながらも、実際は苦手な対人関係や酷いパワハラ・セクハラを極限まで我慢してしまう、もっと言えばその状態が周囲にとっては当たり前の状態としてまかり通ってしまうような傾向。
たとえ傷つけられても(仕事を遂行するなど)義務を優先させようとする傾向を助長していると言えます。
それら3重合がアングル上の山羊座金星-テイルとスクエア。人との交流・つながりを心底必要としながらも、防衛心の強さから踏み切れないでいる、しかも外部から傷つけられやすく常に不安を抱えやすい———
Aさんと同様に、確かにこの傾向が「対人関係の引きが良くない傾向=運が悪いと感じやすい」ことにつながっているのは確かだと思います。とは言え、こういった深刻で複雑な傾向を「Bさんが悪い」「運が悪い」と断じるのはあまりに単純すぎるように思うのです。
どうしたら「開運」するのか
Aさんの男性のご友人に社会的にも金銭的にも成功されている方がいらっしゃるそうで、その方は「開運のためならできることは何でもする」スタンスなのだそうです。
神社仏閣巡りや御朱印集め、滝行しながら成功をイメージする瞑想、手のひらに手相の線を書き加える取り組みなど日々行っているそうで、もちろん神仏によるご利益やイメージによる効果は大いにあるのだろうと思います。
特にAさんのように火星-海王星を持つ方にとっては、こういった方法も開運効果が見込めるのかもしれません。
ただ「AさんやBさんが感じている運の悪さ(個人ではどうにもできない流れを持たされているパターン)」を「開運の方向に持っていくには?」と占星術で考えた時、今の私としては、
という考えなのですが、皆様はどう思われますか?
もちろん進行図や経過図など重ねることで開運の機会はいくらでも見つけられますが「根本的な開運」というのはやはり出生図に基盤があるのではと……。
私にとって難しいテーマですが、これからも考え続けていけたらと思っています。
コメント
コメント一覧 (4件)
桐吉先生、大変興味深い記事をありがとうございます。興味深く拝読させていただきました。
自分も強烈に開運に関心があります。
ただ、易の思想ではないですが高く昇れば谷も深いのではないかという事に恐れも感じています。
Aさんの「運の悪さ」を読んで、「海王星的なお悩み」と思いました。
なので出生図の海王星に目が行きました。
海王星が効いている方は、損を被りやすいですよね。そういうお役目を担わされているのかもしれません。
私も海王星が効いている多くの方を鑑定するにつけ、ご自分では、進んで奉仕の気持ちもないのに強制的に奉仕させられる形になっている方がすごく多い気がしています。(カスハラを受けやすいなど。暴言を吐いたほうは心の重荷を他人にぶつけることですっきりするという利益があります)
そういう方はとてもやさしい。優しいから、人からも、運命からも付け込まれるのではないかと思います。
どこかで「私はこのような運命を受ける人間ではない」と途転するしかないと思っています。その時に、「中年の危機」的な状況になるかもしれません。
私は運が今いい人も、いつか運勢の波で悪くなる時が来ると思っています。
運が悪い時は例えていえば満月から月が掛けていくような時期です。
その時にいかに「幸運の種」を仕込んでおけるのか、それが開運の種まきと思います。
運命に現れている「奉仕しなければならない運勢」を、意識的に自分のコントロールにおいてやってみる。
環境から強制されるのではなく、です。
運勢にも逆らわない、自分の運勢に沿って、良い道具のように意識的に使うのです。
そしてそれを開運の種として、土に埋めたと考えてみる。すぐに帰ってこないほうがいいです。(すぐプレゼントで返してもらわないほうが、幸運が返ってくるまで時間がたてばたつほど利子がたっぷりつくと考えるようにすると良いです。かつて受けた暴言のご利益もウキウキして待つといいです)
満月から月が掛けていく時期に相当する時、その種をたくさん埋めてゆくのです。
新月から満月に至る時期はきっと多くの方から応援される開運の時期となるのではないでしょうか。
私は開運の時期でも、種をまいていきたいと思っていますよ。とてもとっても欲張りなので。
RINA先生!いつも本当にお世話になっております。
記事をご覧下さっただけでなく、コメントまで頂けてとても嬉しいです。
>海王星が効いている方は、損を被りやすいですよね。そういうお役目を担わされているのかもしれません。
>進んで奉仕の気持ちもないのに強制的に奉仕させられる形になっている方がすごく多い気がしています。
>運命に現れている「奉仕しなければならない運勢」を、意識的に自分のコントロールにおいてやってみる。
環境から強制されるのではなく、です。
>どこかで「私はこのような運命を受ける人間ではない」と途転するしかないと思っています。
おっしゃる通り海王星の影響が強い方は自他の境界線が曖昧になりやすいため搾取という名の奉仕を求められる方もいらっしゃいますよね。
そのパターンを良くも悪くも味わい尽くした時、つまり「これ以上こういう目に遭いたくない」と心から自覚した時が途転の時なのかもしれません。海王星の影響が強いと、そこに至るまで(真に自覚するまで)どうしても時間がかかりがちな印象はありますが……。
>運が悪い時は例えていえば満月から月が掛けていくような時期です。
>その時にいかに「幸運の種」を仕込んでおけるのか、それが開運の種まきと思います。
>すぐに帰ってこないほうがいいです。(すぐプレゼントで返してもらわないほうが、幸運が返ってくるまで時間がたてばたつほど利子がたっぷりつくと考えるようにすると良いです。かつて受けた暴言のご利益もウキウキして待つといいです)
この「開運の種まき」と「かつて受けた暴言のご利益」というお考えにはハッとしました。
この記事内で言う「運の悪さ」を回避する・開運を目指す時に「今自分は種をまいているのだ」という意識……つまり客観的な視点を持つことはとても重要だと思ったからです。
海王星が効いている方はどうしても目先の状況に流されがちですが、それでも今やっている奉仕(種まき)が将来の何かしらの発芽につながる、と意識することは「運命につけこまれること」の牽制にもつながるかもしれない、と思います。
私自身は「開運」という概念にあまりピンと来るものがなくて、流れてきた運命を受け入れる派(?)なのですが、それでも「苦しい時こそ種をまいておく、その意識を持つ」という概念は今後大切にしたいと思いました。それは出生図のどうにもならないパターンを客観視するひとつの有効な対策でもあると思うからです。
RINA先生、重要なご示唆をありがとうございました。
先生お久しぶりです。三重円講座ではお世話になりました。
運ってすごい身近な言葉だけどものすごく大きくて捉えてどころが無い物だなーと常日頃の感じていて。でもホロスコープには結構しっかり出てる物なのだと改めて発見and勉強になりました。
最後の開運の方向に持っていく占星術の考えは仰る通りだなと思いました。
持って生まれた特性は変わらないが、それを知る事でより良いほうに人生を持っていける物のひとつが占星術だと思っています。
まだまだ、実体験が少ない身としてはこういった事例はすごく勉強になります。
これからも先生のブログ楽しみにしております!
そして、猫ちゃんの顔最高ですね(笑)写真も楽しみにしてます。
ヒカルさん!しばらくご無沙汰しておりました。
記事をご覧下さって嬉しいです、コメントありがとうございます!
>運ってすごい身近な言葉だけどものすごく大きくて捉えてどころが無い物だなーと常日頃の感じていて。
私も同じなんです!
占い師と名乗る以上「運」という言葉とは切っても切れない実情があるのですが、私自身がなんとなくピンと来ていないというか、おっしゃる通り捉えどころがなくてよく分かっていない感じだったんですね。
とは言え、鑑定現場では「自分の運の良し悪し」をダイレクトに感じて「開運したい」と悩んでいらっしゃる方が実際にたくさんいらっしゃいます。
私達占星術を学ぶ者がそういった方にできることというのは、ヒカルさんもおっしゃるように、
>持って生まれた特性は変わらないが、それを知る事でより良いほうに人生を持っていける物のひとつが占星術
ということであり、その方の特性を深く知って頂くべく知識と言葉を尽くしてお伝えしていくしかないのかな……と(今のところは)思っています。
この記事がちょっとでもヒカルさんのお役に立てたのならすごく嬉しいです。
猫のコメントまでありがとうございます~写真撮るのが下手なんですがまた見てやって下さい。
ヒカルさんのブログ(私もジェニファー好きです~!)も更新楽しみにしています。
いつも本当にありがとうございます!